第5話 ありがとう
どうしても、ここから先が書けなかった。 彩ちゃんに教えてもらった通り、会話文をメインに書き、その間に『地の文』を入れた。キャラ設定は既に実際の人物がいるので省いた。テーマは『浮気』。浮気をやめて欲しいからっていう気持ちが…
どうしても、ここから先が書けなかった。 彩ちゃんに教えてもらった通り、会話文をメインに書き、その間に『地の文』を入れた。キャラ設定は既に実際の人物がいるので省いた。テーマは『浮気』。浮気をやめて欲しいからっていう気持ちが…
それは、ふと思ったことだった。本当に、何を考えていたわけでもなく、言葉にして思い浮かべていたわけでもなく、不意に口から零れ落ちていった──そんな感覚だった。 「佑羽たちは彼に浮気されたらどうする?」 突然の質問に二人は顔…
「今さ、何が一番モヤモヤした?」 不意に尋ねられ、私は今までの会話で感じたことを思い出す。 シュウが佑羽のことを好きでもないのに手を出そうとするのも「えー」と思ったし、誰でもいいってことにも驚いた。そして……それが私にも…
私は小説を書いたことがないから「続きが書けない」という感覚がよくわからなかった。 佑羽の書いたこの小説は、彼女がいるにも関わらず女子から誘われたら簡単に遊びまくるという男子が主人公の恋愛ものだ。 そんな主人公に悩んでいた…
結局、玲音れのんからはっきりとした答えを聞くことはできなかった。はっきりとしたというより、俺が期待したといった方が正しいか。玲音の出した答えは「今のこの関係は楽しいと思ってる」という、グレー色極まりないものだった。 つま…
はあ~~~~。 放課後、教室に戻ると机に突っ伏すようにして大きな溜め息を吐いているクラスメイトに遭遇した。 「どうしたの?」 近付き、そう声を掛ける。 顔を上げた彼女が僕の顔を見上げると 「あ、聖くんか。ん…あの…
『珊瑚の指輪を左小指にしていると運命の相手と出会えます』 ――私もこの指輪で最高の恋人と巡り会えました―― ――今度、結婚します。全てはこの指輪のお陰です―― 雑誌の広告にあるこんな言葉を読むと、自分の左…
彼女はマイクをテーブルの上に置くと間近にいる男性に微笑みかけた。 彼は同じように笑みを返すと音楽と映像が流れ出したテレビへと顔を向ける。 その音楽、歌詞に聞き覚えがあった海白彩は歌っている恋人を見つめた。 『初めて…
風が吹くと足下の木の葉が乾いた音を立てながら渦を巻いた。 その中を恋人達がゆっくりと歩を進めている。 ふと女性が男性とは逆の方向に目を向け足を止めた。 「彩、どうした?」 腕を組む、というより彼のコートの腕部分だ…
「お邪魔します」 海白彩は今日も実春の家へ遊びに来ていた。 「あら彩ちゃん、いらっしゃい」 玄関先で彼の母親に会う。どうやら急いで出掛けるようで、いつもするちょっとした世間話は今日はお預けらしい。 「じゃあ実春、後は…