18.自らの意志でそうなるのと、強制的にそうなるのとでは全然違うんだ|牙白(ガラ)
まさか。あの男が言っていたことは本当だったのか。 追手から逃れた遼太朗たちが、一息ついた時だった。止血をしようと佑羽の傷口を見て違和感を抱いた。確認のために服を脱がす。 露になった肩からは、既に血が流れることはなか…
まさか。あの男が言っていたことは本当だったのか。 追手から逃れた遼太朗たちが、一息ついた時だった。止血をしようと佑羽の傷口を見て違和感を抱いた。確認のために服を脱がす。 露になった肩からは、既に血が流れることはなか…
それは突然起こった。何の前触れも気配も一切なかった。 そんな状況下で、佑羽の悲痛な叫びが空気を引き裂いたのだ。 右肩を押さえる指の間と、それ自体からとめどなく血が流れ、佑羽の足元に溜まっていく。咄嗟に元凶に向けて銃…
「兵器と思われる人型の生物2体と遭遇しました。1体は仕留めましたが、もう1体には逃げられてしまいました。朧は『兵器の餌』として使用されていることを確認。……すみません、上原がかなり深手を負ってしまったので、1班撤退を試み…
連絡が入ったのは、到着時間10分前のことだった。 研究施設は山間地帯に位置し、車で付近まで向かった後は徒歩での移動となっていた。その車内でよからぬ連絡がMARSから届いたのだ。 「工場内より、生物兵器と思われる物体が脱走…
ここ言守育成施設では、その能力と特技によってクラス分けされていた。 情報収集を主に担う『華クラス』。武器の所持・使用が認められ、言守の補佐として実戦の場に向かう役目を担うのが『影クラス』。朧を扱い、それの回収や魄の浄…
「やっぱり、伊藤先生と晟だったんだね」 約束通り指定された部屋を訪れた佑羽と、その傍らに立つ二人の男性の姿を見て聖はそう言った。 『調べ物』をするには最適な環境が整っている小部屋に招き入れ、各々は近くの椅子に座る。自分…
これは賭けだ。せっかく向こうから舞台を用意してくれたんだ。のってみようじゃないか。 二日前に仲間から得た情報を元に、智孝は次の依頼内容を話した。補佐や調査を主に担う『影クラス』に向けて話す表向きの内容ではない。今後チ…
聖が呼ばれた理由はこれだったんだ。イベントホールの事件や、智孝が言っていた次の任務(・・・・)のメンバーに入っていないことに疑問を抱いていた晟だったが、聖の語る魄や朧についての説明を聞いて納得した。中でも、朧と魄は元々…
「魄は、私達にとって必要?」──講義の途中、そう発言した彼女は今、自分の目の前で親友でもある樫倉晟と談笑していた。 晟が教室内に響き渡るような声を上げたため、その場にいた全員の注目を一斉に浴びた。しかし、そんな晟から皆…
そろそろ動き出してもいいな。 三年という年月をかけて得た情報と、先日起きた向こうからのアクションに、智孝は静かな闘志を燃やしながら決意した。 言守という一種の傭兵施設でもある幹部の人達からの命めいもあり、その計画を…