僕の世界(とびら)を開く鍵
女顔というものは、性格によって「かわいがられる」か、「からかわれる」かに分かれると思う。 誰にでも笑顔を向け、人懐っこい性格ならば前者。僕はと言えば、明らかに後者の方だった。 幼い頃は、かわいいというだけでちやほやされる…
女顔というものは、性格によって「かわいがられる」か、「からかわれる」かに分かれると思う。 誰にでも笑顔を向け、人懐っこい性格ならば前者。僕はと言えば、明らかに後者の方だった。 幼い頃は、かわいいというだけでちやほやされる…
全身が痛い。 もう、指一本動かすことも出来ない。 意識が吹っ飛びそうになる中、先生の声が聞こえた──「逃げて」って。 逃げないよ。 暴力を受けることしか生きる価値がないと思っていた僕の考えを正してくれた先生。 そんな先生…
初めは、聞き間違いかと思った。 でも、彼女ははっきりと言った。 「いじめられるのは、弱いからじゃないよ」 どういう意味なのか? と眉間に皺を寄せる。 「立場的にとか、肉体的にっていうのはあるけど、本当は強くて優しい人だか…
「やっぱり、伊藤先生と晟だったんだね」 約束通り指定された部屋を訪れた佑羽と、その傍らに立つ二人の男性の姿を見て聖はそう言った。 『調べ物』をするには最適な環境が整っている小部屋に招き入れ、各々は近くの椅子に座る。自分…
「魄は、私達にとって必要?」──講義の途中、そう発言した彼女は今、自分の目の前で親友でもある樫倉晟と談笑していた。 晟が教室内に響き渡るような声を上げたため、その場にいた全員の注目を一斉に浴びた。しかし、そんな晟から皆…
今日も雨が降っている。 憂鬱以外の感情の持ちようが無い僕は傘を開くと学校を後にした。 雨は、嫌いだ。 視線を地面に落とすようにして歩き出す。 そんな僕を擦り抜けて雨の中でも他の生徒達は賑やかな笑い声を振りまいて…
はあ~~~~。 放課後、教室に戻ると机に突っ伏すようにして大きな溜め息を吐いているクラスメイトに遭遇した。 「どうしたの?」 近付き、そう声を掛ける。 顔を上げた彼女が僕の顔を見上げると 「あ、聖くんか。ん…あの…
彼女はマイクをテーブルの上に置くと間近にいる男性に微笑みかけた。 彼は同じように笑みを返すと音楽と映像が流れ出したテレビへと顔を向ける。 その音楽、歌詞に聞き覚えがあった海白彩は歌っている恋人を見つめた。 『初めて…
終業式も間近に迫った12月中旬。 部活で使用する雑多な資料を抱えた海白彩は、いつものように裏庭を近道として横切ろうとした時だった。 聞き覚えのある男性達の声が聞こえてきて、思わず足を止める。 木の陰からそっと覗く…
「でも彩ちゃんが手伝ってくれるとは思わなかったよ。何でも言ってみるもんだね」 玖堂佑羽(くどう ゆば)は会議室の扉を開けながらそう言った。 「提出するものも何とか終わったしね。それにココって入ったことなかったから」 …