僕の世界(とびら)を開く鍵
女顔というものは、性格によって「かわいがられる」か、「からかわれる」かに分かれると思う。 誰にでも笑顔を向け、人懐っこい性格ならば前者。僕はと言えば、明らかに後者の方だった。 幼い頃は、かわいいというだけでちやほやされる…
女顔というものは、性格によって「かわいがられる」か、「からかわれる」かに分かれると思う。 誰にでも笑顔を向け、人懐っこい性格ならば前者。僕はと言えば、明らかに後者の方だった。 幼い頃は、かわいいというだけでちやほやされる…
全身が痛い。 もう、指一本動かすことも出来ない。 意識が吹っ飛びそうになる中、先生の声が聞こえた──「逃げて」って。 逃げないよ。 暴力を受けることしか生きる価値がないと思っていた僕の考えを正してくれた先生。 そんな先生…
初めは、聞き間違いかと思った。 でも、彼女ははっきりと言った。 「いじめられるのは、弱いからじゃないよ」 どういう意味なのか? と眉間に皺を寄せる。 「立場的にとか、肉体的にっていうのはあるけど、本当は強くて優しい人だか…
まさか。あの男が言っていたことは本当だったのか。 追手から逃れた遼太朗たちが、一息ついた時だった。止血をしようと佑羽の傷口を見て違和感を抱いた。確認のために服を脱がす。 露になった肩からは、既に血が流れることはなか…
それは突然起こった。何の前触れも気配も一切なかった。 そんな状況下で、佑羽の悲痛な叫びが空気を引き裂いたのだ。 右肩を押さえる指の間と、それ自体からとめどなく血が流れ、佑羽の足元に溜まっていく。咄嗟に元凶に向けて銃…
「兵器と思われる人型の生物2体と遭遇しました。1体は仕留めましたが、もう1体には逃げられてしまいました。朧は『兵器の餌』として使用されていることを確認。……すみません、上原がかなり深手を負ってしまったので、1班撤退を試み…
ピピッという電子音の後に1班上原から連絡が入った。それは地下ルートの確保と、そこにある朧の存在、そして2層となっている地下1階部分にある制御室に向かうという内容だった。地下に向かった方が得ようとしている資料も多いことか…
連絡が入ったのは、到着時間10分前のことだった。 研究施設は山間地帯に位置し、車で付近まで向かった後は徒歩での移動となっていた。その車内でよからぬ連絡がMARSから届いたのだ。 「工場内より、生物兵器と思われる物体が脱走…
ここ言守育成施設では、その能力と特技によってクラス分けされていた。 情報収集を主に担う『華クラス』。武器の所持・使用が認められ、言守の補佐として実戦の場に向かう役目を担うのが『影クラス』。朧を扱い、それの回収や魄の浄…
「やっぱり、伊藤先生と晟だったんだね」 約束通り指定された部屋を訪れた佑羽と、その傍らに立つ二人の男性の姿を見て聖はそう言った。 『調べ物』をするには最適な環境が整っている小部屋に招き入れ、各々は近くの椅子に座る。自分…