理性と欲望の天秤3
それは数時間経った今も変わらずにいた。その間に後片付けをしようが、風呂に入ろうが、気持ちはさっぱりしない。 悶々とした気持ちを抱え、智孝はベッドの上に寝転がった。うまく整理できない頭の中とは正反対に、体はベッドに沈んだま…
それは数時間経った今も変わらずにいた。その間に後片付けをしようが、風呂に入ろうが、気持ちはさっぱりしない。 悶々とした気持ちを抱え、智孝はベッドの上に寝転がった。うまく整理できない頭の中とは正反対に、体はベッドに沈んだま…
「ねえ、私がお邪魔だったら、外に出てくけど?」 事情を知っている人のこの発言は、智孝と佑羽を赤面させるには充分だった。佑羽はそれにプラス、手を左右に勢いよく振っている。 「いや、そんな必要ないから! っていうより、里美が…
家の留守を丸一日預かる。 そういったことは、家族と暮らしていてたまに起こることだろう。それは伊藤智孝(いとうともたか)にも言えたことであり、彼は妹と二人で二日間を過ごすことになった。 しかしこの妹、兄に家事をやらせるどこ…
最悪だ。いつものバカみたいな元気が、どうしてこういう時に限ってなくなってしまうんだろう。 玖堂(くどう)佑羽(ゆば)はぼーっとする頭でそんなことを思った。 今日は共通の知り合いたちと来たスキー旅行の初日である。恋人…
いつの間にか恒例となっていたお隣さん同士での花見。初めの頃はお弁当を作ってと、本格的なものであったが、次第に互いの都合がつかなくなり、夜の散歩がてらにという気軽なものへと変わっていった。そして、それに参加するメンバーに…
子供の頃から毎年もらっていたバレンタインのチョコレート。 お隣さんだからという、ただの義理チョコだった。 去年も、OBとして母校である高校の部室に顔を出した時、集まったメンバーたちと一緒に食べた。 テーブルの中央…