理性と欲望の天秤3
それは数時間経った今も変わらずにいた。その間に後片付けをしようが、風呂に入ろうが、気持ちはさっぱりしない。 悶々とした気持ちを抱え、智孝はベッドの上に寝転がった。うまく整理できない頭の中とは正反対に、体はベッドに沈んだま…
それは数時間経った今も変わらずにいた。その間に後片付けをしようが、風呂に入ろうが、気持ちはさっぱりしない。 悶々とした気持ちを抱え、智孝はベッドの上に寝転がった。うまく整理できない頭の中とは正反対に、体はベッドに沈んだま…
「ねえ、私がお邪魔だったら、外に出てくけど?」 事情を知っている人のこの発言は、智孝と佑羽を赤面させるには充分だった。佑羽はそれにプラス、手を左右に勢いよく振っている。 「いや、そんな必要ないから! っていうより、里美が…
「先輩、バレンタインで俺が言ったこと覚えてる?」 この一言で、先輩の顔はみるみる内に赤くなった。 反応から覚えていることが予想できるが、どうしても彼女の口から言わせたくなる。 先輩は俺から視線を外し、躊躇いがちに口を開く…
「ねえ、遼(りょう)。ひざまくらしてあげる。こっちきて」 自室のベッドの上に座り、佑羽(ゆば)はそう言って手招きをした。 年頃の男子としてはおいしいのか困ってしまうのか微妙なシチュエーションだが、せっかくの佑羽の誘い…
家の留守を丸一日預かる。 そういったことは、家族と暮らしていてたまに起こることだろう。それは伊藤智孝(いとうともたか)にも言えたことであり、彼は妹と二人で二日間を過ごすことになった。 しかしこの妹、兄に家事をやらせるどこ…
彼女は言った。「男が怖い」と。 次に「いなくなっちゃえばいいのに」と続けた。 そして最後に「ひどいこと言ってごめんなさい」と、俺に謝った。 言う相手が間違っていることも、そんな男ばかりでないこともわかっていると、彼女は言…
まさか。あの男が言っていたことは本当だったのか。 追手から逃れた遼太朗たちが、一息ついた時だった。止血をしようと佑羽の傷口を見て違和感を抱いた。確認のために服を脱がす。 露になった肩からは、既に血が流れることはなか…
それは突然起こった。何の前触れも気配も一切なかった。 そんな状況下で、佑羽の悲痛な叫びが空気を引き裂いたのだ。 右肩を押さえる指の間と、それ自体からとめどなく血が流れ、佑羽の足元に溜まっていく。咄嗟に元凶に向けて銃…
「兵器と思われる人型の生物2体と遭遇しました。1体は仕留めましたが、もう1体には逃げられてしまいました。朧は『兵器の餌』として使用されていることを確認。……すみません、上原がかなり深手を負ってしまったので、1班撤退を試み…
ピピッという電子音の後に1班上原から連絡が入った。それは地下ルートの確保と、そこにある朧の存在、そして2層となっている地下1階部分にある制御室に向かうという内容だった。地下に向かった方が得ようとしている資料も多いことか…