強引
ドクン、と一つ大きく心臓が跳ねた。 右手首に加わった強い力。 そして、あと数センチで触れてしまうほど縮まった互いの唇の距離。 射抜くような彼の視線にとらわれた私は、瞬きするのも忘れて彼の言葉を聞いた。 「先輩、俺の性別わ…
ドクン、と一つ大きく心臓が跳ねた。 右手首に加わった強い力。 そして、あと数センチで触れてしまうほど縮まった互いの唇の距離。 射抜くような彼の視線にとらわれた私は、瞬きするのも忘れて彼の言葉を聞いた。 「先輩、俺の性別わ…
2月14日。 この日は朝から皆そわそわしてて、好きな子の行動をお互いに気にしてる。綿飴みたいに甘くてふわふわとした空気に包まれている感じが何だかいい。 それに、女の子がすっごくかわいく見えるんだよね。好きな人のために一生…
子供の頃から毎年もらっていたバレンタインのチョコレート。 お隣さんだからという、ただの義理チョコだった。 去年も、OBとして母校である高校の部室に顔を出した時、集まったメンバーたちと一緒に食べた。 テーブルの中央…
今の僕の現在最大の関心といえば当然かもしれないがバレンタインデーにある。 それはチョコがいくつ貰えるかという事よりも、特定の女性から頂戴出来るかという所に掛かっている。 今までなら義理であろうと誰かに貰えさえすれば…
玖堂佑羽(くどう ゆば)は学校の門の壁に寄りかかりながら、自分の吐く白い息が空中に霧散(むさん)していく様子を眺めていた。 「(子供の時は吐く息の大きさを競っていたっけ)」 懐かしくなって実行しようと大きく息を吸い込む。…
「はい。どうぞ」 にこりと笑いながら佑羽は言った。手にしているカップからは、ゆらゆらとホットチョコレートの湯気がたっている。 晟はお礼を述べてひと口飲む。 ほどよい甘さと、寒空の下にはありがたい温かさに自然と顔がほ…