全身が痛い。
もう、指一本動かすことも出来ない。
意識が吹っ飛びそうになる中、先生の声が聞こえた──「逃げて」って。
逃げないよ。
暴力を受けることしか生きる価値がないと思っていた僕の考えを正してくれた先生。
そんな先生を置いて逃げたら、きっとこの先僕は死ぬ。
大切な何かを失うって、そういうことだ。
ガッと、しがみつくように嫌がる先生へ暴力を振るう男たちの一人の足を掴んだ。
「なんだぁ? このガキィ……死にてえのか!」
強い衝撃と先生の叫び声と共に、僕は数メートル地面を転がった。
思うように動かない腕に力を込め、少しだけ地面から顔を上げる。
「……死にたいんじゃない」
感覚がほとんどないのに、不思議と言葉が外へ出た。
「やめて!」
もう一度、先生の悲痛な叫びが聞こえる。
「死んでもいいから守りたいんだ。僕は──僕は先生を守る!」
僕の気迫におされてか、男たちは息をのんでたじろぐ。しかし、目線は僕に向けられてはいなかった。
一歩、また一歩と下がる男たち。
すると、頭上で男の声が届いた。
「よく言った。あとは任せろ」
それが、紘人さんとの最初の出会いだった──
──聖と紘人の出会い