楽曲提供|音楽の卵|時計紡ぎ
ようこそ99.7の世界へ。
これは脱出ゲームである。
プレイヤーの君たちは、その大いなる知恵と勇気を使い、ゲームをクリアしてもらいたい。
途中、様々な試練が君たちを襲うだろう。
君たちを侵入者とし、攻撃をしてくる敵もいる。
対抗できるよう、武器を所々に用意しておいた。ぜひ活用してくれたまえ。
そうそう、初めに君たちには建物の地図だけ装備しておいた。訪れた場所は光り、マッピングできるようになっているから、これもうまく使ってもらいたい。
次にルールを説明する。
これは3人でひとチームとし、チーム全員でゲームをクリアしなければならない。
ゲーム開始はそれぞれ別のフロアからのスタートになる。
通信はお互いのIDを確認してからとなるので注意して欲しい。
ゲームの外の人間とコンタクトをとりたいのであれば、このミーティングルームに戻ることだ。
戻り方は実に簡単。腕に装填されている端末のホームボタンを押せばいい。
しかし、それにはライフを3つ消耗することになる。
君たちに備わっているライフは99。慎重に使いたまえ。
それでは、健闘を祈る。
円柱型のだだっ広いホールに響き渡った音声は、業務連絡のようにそう案内をした。
ゲームに参加している樫倉晟、玖堂有羽、黄楊諫美の三人は、皆一様にピッチリとした全身スーツを身につけていた。まるでアクションを計測するような形状と、ゲームでいうところの『コントローラー』部分である特殊なグローブとブーツを装着していたが重さは全く感じない。
それもそのはずで、彼らは意識だけがこの空間に存在していた。肉体は現実の世界でカプセルホテルの一室を思わせる容器の中で眠っている。
大規模なイベントの中で行われた300人の同時プレイを可能にした体験型アクションゲーム。
純粋にゲームを楽しむために参加した三人だったが、思わぬ敵の魔の手が忍び寄っていた。
「どうやらこのゲーム、“流天”が関わっているようなんです」
普段彼らの仲間として任務を果たしている海白彩は、また同じ関係性をもつ伊藤智孝にそう告げた。
詳しい話を聞いている間に、一足先に会場に着いていた神谷聖から新たな情報が入る。
「まずい状況ですね。本来、ゲームの中にはなかったことが起きています」
それを聞き、智孝は彩と共に逸る気持ちで三人の元に向かった。
「そうか……わかったぞ。本当のゲームオーバーも、奴らの狙いも。俺たちは色々惑わされすぎてたんだ」──晟
音楽と共にゲーム感覚で送る小説、「99.7」
いくつもの試練が彼らを襲う。
「大丈夫。自分の力を信じて」──有羽
「99.7」に秘められた真相とは?
あなたは見破ることができるだろうか。
「死ぬなよ。絶対、生きて戻ってこい」──智孝
ゲームの中と外からの視点で綴るストーリー。
どうぞ、お楽しみ下さい。
99.7
■制作・著者|橘右近