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Len*Ren
サプライズ
「玖堂(くどう)って初めてのタイプだったから、ちょっと興味があっただけだよ」 彩(あや)先輩の発言を聞いて、昨日聖(ひじり)がどこかすっきりしたような顔で言っていたのを思い出した。 放課後の東校舎の裏。そこは掃除をしに用務員の人くらい... -
Len*Ren
ウタニ ササゲル
文化祭も終わり、紅葉がちらほら見え始めた11月。私はお気に入りとなっている中庭に足を運んだ。休み時間や放課後にここを利用する生徒の数は、先週と比べてぐんと減っていた。すっかり肌寒くなったからなぁ……大きく息を吸った私の胸に冷たい空気が流... -
Len*Ren
きっかけの雨
あの人との距離が縮まるきっかけは、いつも雨だった。 初めての会話、初めての一緒の下校、そしてお互い名前で呼び合うようになった時も雨が降っていた。 小雨というよりは強い降り方の雨に、私は昇降口で空を見上げて息を一つ吐いた。まだ降り始めて... -
Len*Ren
ささくれ
最初はただの“親友とよく話す女の子”だった。 いつからだろう。君が、胸に引っかかるようになったのは─── ささくれ 「うーん、これどう考えても時間がないなぁ。どうしよう……晟(せい)にお願いしてみようかな?」 玖堂有羽(くどう ゆば)は書類と... -
Len*Ren
『願いの舟』
「智孝さん、次はあれに乗りませんか?」 船に乗りコインを泉に投げ入れるという恋人に人気の室内アトラクション、私はそれを指差した。 「スピーカーから聞こえてくる声に従ってコインを投げて下さいね」 乗物に乗り込んだ私達に、係員がそう注意を促しな... -
Len*Ren
待ち合わせ
ベンチに座ってぼんやりと冬の装いを纏(まと)っている人々の往来を見ていた。 待ち合わせ時刻を5分ほど過ぎている。 広場に立つ時計を見上げ辺りを見回す、という何度目かの行動をして私は携帯電話を取り出した。 別に彼にかけようというのではなく、た... -
Short Short
麗らかな恋の花
春。 桜が咲き始めた頃、私は学校を卒業した。 卒業式も無事に終わり、学校生活最後を名残惜しむようにして、卒業生達は校舎やら校庭やらに集まっていた。 先生方に挨拶を済ませた私は、特に用はないと生徒達の間をくぐり抜け門を出る。 「志奈(しな)ー!...