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短編小説
7:約束|君がいたから
もしかしてと思い出したことだが、あのナンパの日の帰りも、真己は私を送るために誘いにのったのではないだろうか?買出しの品を手にして、店が忙しいことを忘れるとは思えない。 「真己くんの優しさは誰にでも向けられるけれど、菜々子だけに向けられた優... -
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6:バナナミルクと私の居場所|君がいたから
小料理屋「凛」は本当に近所にあった。込み合った商店街の中のお店くらいの広さだが、狭くは感じない。きっとおばさんのセンスがいいのだろう。 予め真己から話が通っていたようで、おばさんは驚くことなく快く迎え入れてくれた。まだ夕方ということもある... -
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5:再会|君がいたから
真己は少しでも私たちと一緒に食べるご飯をおいしいと感じてくれていただろうか?父は、私たちが楽しいと感じているのだから真己も同じ気持ちだと言っていたが。一緒にいることが当たり前で、意識することなどなかったのだが……私たちの関係って、一体何な... -
短編小説
4:偏見と牽制|君がいたから
「菜々子」 不意に名前を呼ばれて、私はびくりとして顔を上げた。 「何だ。お父さんか」 もう、私を「菜々子」と呼ぶ男性は父しかいないというのに、何を期待しているんだろう。 「どうしたの?」 「お茶淹れたから、一緒に飲もう」 「うん。わかった」 私... -
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3:四つ葉のクローバー|君がいたから
それから真己は本当によくしてくれた。私が学校に慣れるまでは──といっても、実際は卒業まで一緒に登校してくれたり、何か困ったことがあったら助けてくれたり、遊び仲間に加えてくれたりもした。 私にとってスーパーマン的な存在である真己でも、かわいら... -
短編小説
2:最悪な第一印象|君がいたから
私、榎本菜々子(えのもと ななこ)と真己は、幼馴染みということもあり、私が7歳の頃からの付き合いだった。 ちなみに真己とは同い年である。それなのに8年しか一緒にいられなかったのは、私たちが中学二年生の頃、真己のお母さんの仕事の都合で、引っ... -
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1.帰宅|君がいたから
6月28日。 その日は梅雨時にもかかわらず嫌味なほど晴れていた。 火葬場から天へと昇る煙を見つめ、私は一時間程前に別れを告げた人を思い出した。 本橋真己(もとはし まさき) 私の幼馴染みで、家族のような存在でもあった彼は、一言で言えば面倒見... -
Len*Ren
理性と欲望の天秤3
それは数時間経った今も変わらずにいた。その間に後片付けをしようが、風呂に入ろうが、気持ちはさっぱりしない。悶々とした気持ちを抱え、智孝はベッドの上に寝転がった。うまく整理できない頭の中とは正反対に、体はベッドに沈んだままだ。月明かりで浮... -
Len*Ren
理性と欲望の天秤2
「ねえ、私がお邪魔だったら、外に出てくけど?」 事情を知っている人のこの発言は、智孝と有羽を赤面させるには充分だった。有羽はそれにプラス、手を左右に勢いよく振っている。 「いや、そんな必要ないから! っていうより、里美がいないと困るし」「... -
Len*Ren
理性と欲望の天秤
家の留守を丸一日預かる。 そういったことは、家族と暮らしていてたまに起こることだろう。それは伊藤智孝(いとうともたか)にも言えたことであり、彼は妹と二人で二日間を過ごすことになった。 しかしこの妹、兄に家事をやらせるどころか、揉め事の種を蒔...