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Len*Ren
愛しき人
子供の頃から毎年もらっていたバレンタインのチョコレート。 お隣さんだからという、ただの義理チョコだった。 去年も、OBとして母校である高校の部室に顔を出した時、集まったメンバーたちと一緒に食べた。 テーブルの中央に、徳用物のように山盛りに積... -
ONE SCENE STORY
僕の世界(とびら)を開く鍵
女顔というものは、性格によって「かわいがられる」か、「からかわれる」かに分かれると思う。誰にでも笑顔を向け、人懐っこい性格ならば前者。僕はと言えば、明らかに後者の方だった。 幼い頃は、かわいいというだけでちやほやされる。だけど小学生ともな... -
ONE SCENE STORY
劣等感ていうのは、自分だけが感じるものなんだよ
私は、自分の中に流れる女の血が嫌いだった。男に溺れた母親のようにはなるまいと、必死で自分の中の女を排除してきた。感情の赴くままに動かず、女だからと甘えず、男にバカにされないよう対等に渡り歩こうと生きてきた。だから必死で勉強をした。努力を... -
ONE SCENE STORY
死にたいんじゃない。死んでもいいから守りたいんだ。
全身が痛い。 もう、指一本動かすことも出来ない。 意識が吹っ飛びそうになる中、先生の声が聞こえた──「逃げて」って。 逃げないよ。 暴力を受けることしか生きる価値がないと思っていた僕の考えを正してくれた先生。 そんな先生を置いて逃げたら、きっと... -
ONE SCENE STORY
回収作業
「全機能停止を確認。回収に入ります」 黒く濁る瞳を見つめながら、僕は上官にそう報告した。上官は僕が任務完遂することが当然であるかのように、さほど興味もなさそうな声色で了解の意を告げ、通信を切る。 頭部を潰され、ピクリとも動かず横たわるそれ... -
ONE SCENE STORY
いじめられるのは「弱いから」じゃないよ
初めは、聞き間違いかと思った。 でも、彼女ははっきりと言った。 「いじめられるのは、弱いからじゃないよ」 どういう意味なのか? と眉間に皺を寄せる。 「立場的にとか、肉体的にっていうのはあるけど、本当は強くて優しい人だからだよ」 ますます言っ... -
ONE SCENE STORY
言う相手が間違ってても。言える場所があるって大事なことだよ。
彼女は言った。「男が怖い」と。次に「いなくなっちゃえばいいのに」と続けた。そして最後に「ひどいこと言ってごめんなさい」と、俺に謝った。 言う相手が間違っていることも、そんな男ばかりでないこともわかっていると、彼女は言った。でも、どうしても... -
ONE SCENE STORY
こういう時って幸せだな
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短編小説
最終シーン|女という性(さが)、紅の血
「はいこれ、正吾から。野中さんに渡してくれってさ」 「ありがとう、堀江さん」 あれから一週間近くが過ぎ、私は正吾から頼まれた野中さん宛の小さな紙袋を、今まさに手渡していた。 昼休みの裏庭。人の影も少なく、まだ熱が冷めやらない私はチャンスとば... -
短編小説
シーン3|女という性(さが)、紅の血
「うあっちぃ!!」 「バカ正吾! 何やってんのよ!」 化学の実験での出来事。 正吾は、今の今まで熱していた金属皿を素手で掴んでしまった。使っていない皿と間違えたとはいえ、なんてことをしてるんだろう。 当の本人も予想外のことだったらしく、驚い...