Love Case -アイのいれもの-– category –
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落葉の願い
風が吹くと足下の木の葉が乾いた音を立てながら渦を巻いた。 その中を恋人達がゆっくりと歩を進めている。 ふと女性が男性とは逆の方向に目を向け足を止めた。 「彩、どうした?」 腕を組む、というより彼のコートの腕部分だけをそっと握っている彼... -
温もり
「うー、寒い」 手を擦(こす)りながら駅から流れ出してくる人の群れに、何度目かの視線を向ける。 ようやく奥から手を挙げてこちらへ駆けてくる男性の姿を見つけると、彼女は安心したような笑顔になった。 「ごめん、待った?」 遠藤遼太朗の問いに「... -
純白の想い
「お邪魔します」 海白彩は今日も実春の家へ遊びに来ていた。 「あら彩ちゃん、いらっしゃい」 玄関先で彼の母親に会う。どうやら急いで出掛けるようで、いつもするちょっとした世間話は今日はお預けらしい。 「じゃあ実春、後は頼んだわよ。彩ちゃん... -
実を結んだ春の彩り
彼女はぼんやりと携帯画面を眺めていた。 心を占めるのは不安の二文字。 ここ数日、恋人と連絡が取れない事がその原因だ。今一度、彼の電話番号を呼び出すと発信ボタンを押す。 「――お留守番サービスに接続いたします」 何度かのコール音の後に続く、聞き... -
今年こそチョコが欲しい!
今の僕の現在最大の関心といえば当然かもしれないがバレンタインデーにある。 それはチョコがいくつ貰えるかという事よりも、特定の女性から頂戴出来るかという所に掛かっている。 今までなら義理であろうと誰かに貰えさえすれば良かった。 けれども... -
あなたに逢いたい
闇に包まれ始めた風景の中、女性が一人ベンチに腰掛けている。受験勉強の息抜きに近所の公園へと出向いた海白彩だ。 子供が遊ぶには遅い時間帯のため、ここにいるのは彼女一人だけだった。 ふう、と空を見上げると雲の切れ目から月が姿を現す。 綺... -
大切なこと
ノートに鉛筆を走らせていた玖堂は一区切り付いた所で息をひとつ吐き、うんっと伸びをした。そのままの姿勢で時計を見上げると下校時刻はとうに過ぎている。 驚いて窓の外を見ると辺りは薄闇に包まれていた。 「(根(こん)をつめていたわけじゃないん... -
ねがいごと
「いつも私ばかりが会いたがってるから、諫美くんはどうなのかなって」 桜が舞う風景の中でぽつりと有羽が呟く。 満開を少し過ぎてしまったが桜の花見をしようと近所の公園に二人で来ていた。 青空に桜と散り行く花びらが映えてなかなかに素敵な風景だ... -
好きだよ。
ハァ…。 玖堂有羽(くどう ゆば)は柵に寄りかかり、ぼんやりと飾り立てられたイルミネーションを眺めていた。 本当なら恋人と一緒に楽しむはずだったのに。 最初は小さな擦れ違いだった。 それを修復できないままズレは大きくなり、喧嘩にまで発展... -
あなたとこの空の下
「はい、智孝さん」 箸で挟んだ卵焼きを彼の口元に運ぶと男性はそれを当たり前のようにパクリと食べる。 「おいしい?」 「ああ」 智孝は笑顔で頷き、その表情を受けて彩の微笑みも輝きが増した。 恋人達はデートの昼食場所として有名かつ広大な公園...