まず、「怒り」を表現したい時に、“怒ろうとしてはいけません”。
なぜか。
人が怒っている時は、怒ろうとして怒っているわけではないからです。
だから、私から言わせてもらえば、「怒りを表現する=怒鳴る」は、感情の開放という点から見れば“まだまだ”です。
怒鳴ればいいってもんじゃない。
もっと、内に秘めた、マグマのようにぐつぐつと煮えたぎっているエネルギーの塊が「怒り」だな、と。
すんげームカつくことがあって、それに“キレている”だけ。
怒ろうとすると、いつもは「どう怒ってたっけ?」と考えてしまい、怒れないことに焦ります。
じゃなくて、自分で表現するなら、一番ムカつくことを思い出せばいいし、役としてなら生い立ちから“なぜキレたのか?”を探って作ればいいわけです。
今回は、声優養成所時代(最も面白くてためになったところ)でやった『感情の開放。怒り編』を音声化しました。
- 怒りを抑え込んでいると(舞台)監督が判断したら止める
- 殴り合いのケンカになったら止める
- 怒りが消えた・言い合いが延々と続くと判断したら止める
- 二人一組になって演じます
- どちらともなくぶつかり、先に口を開く役だけ決めます
私の場合は、50代後半の男性とのペアだったので、演技中は『オッサン』と呼び、実際のある『オッサン』に対し、めっちゃキレてました。
演技をする時に思い出している・考えていることは、そのまま『間(ま)』となりますが、その考えていることをそのまま文章にすると、小説では『地の文』として表現できます。
※かなりの『怒り』を表現していますので、暴力的な言葉使いが出てきます。
●怒りのエチュード(即興劇)
また今日もケンカした。
あのヤロー、『高校生のくせに生意気な口きくな』だと?
B型の女は合わないとか、出生地とかさ。バカじゃないの?
どうしろってんだよ、生まれ変われって? それこそ……
そんなことを考えていたら、肩にかなりの衝撃を受けた。
痛い。
下向いてたからわかんないけど、オッサンみたいな靴だったな。
「おい!」
後ろから聞こえる怒鳴り声。もしかして。
「おい! お前! 今、肩がぶつかっただろ!?」
やっぱり私だ。
大きく息を吸って、そのまま一気に吐き出した。
「……何?」
「何じゃないだろ! 何じゃ! 最近の若い奴らは、人にぶつかっておいて謝ることもできないのか?」
また出た。
コイツも同じこと言ってる。
若い奴らはって、そればっかり。
フッと笑いが漏れた。
「何笑ってるんだ」
どいつもこいつも。
……あーもう
「あのさぁ」
マジ、うざい
「若い奴らがどうとかこうとか説教たれてくるオッサン? ホント、マジ嫌いなんだよね」
──ねえ、頼むからさ
「消えてくんない?」
***
この後、相手の男性が引いたのがわかり、そこでエチュードは終了。
(怒りが消えてしまったから)
「殺されるかと思った」と、お褒めの言葉をもらいましたw
このように、演技で表現するなら『間』で感情の流れを見せることができるし、小説なら会話文の間に『地の文』を入れることで時間の流れを見せることができます。