予告・番外編– category –
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紆余曲折
いつの頃からだろう。あの人を好きになり始めたのは。有り得ない夢を見ては溜め息を吐(つ)く、そんな行動がいつしか習慣のようになってしまった。彼には付き合っている女性がいる。それが親友ともなれば自分の想いを伝えることが出来ないのは仕方がない... -
平行線
くらりと身体が揺れた。自らの頭を軽く押さえて神谷聖(かみや ひじり)は机に手を置く。 「大丈夫?聖くん」 優しい女性の声が彼に掛かる。聖は椅子に腰を降ろしながら大丈夫だと答えた。 「ちょっと熱っぽいだけだから」 しばらく休めば治るだろう、そ... -
強引|Sakon’s side
互いの息遣いが聞こえてきそうな程の至近距離。 目前に愛しい人の瞳があった。 まるで時間が止まってしまったような感覚に襲われて、身動きが取れない。 上手く呼吸が出来ない中で視界の隅に見える、曇っている空模様が心を写し出しているような気がした。... -
陽だまり
ガチャリ。コンビニの袋を手にした部屋の持ち主が扉を開くと、中にいる人物に向かって声を掛けた。「悪い、遅くなった」返事が無いので怪訝に思い部屋を見渡すと玖堂有羽(くどう ゆば)がベッドの上で横になって寝ている。待ちくたびれて布団の上でゴロ... -
想いを伝えて
色とりどりのイルミネーションが鮮やかに煌(きらめ)いて街の夜を彩(いろど)る。彼らが外へ出た時は、既に辺りは真っ暗だった。 「寒~い」 暖房の効いていた建物から出てきた為、余計にそう思うのだろう。海白彩(うみしら あや)はそう言ってマフラ... -
流星に願いをのせて
「おはよ」 朝、家の前で彼は言った。私も笑顔を浮かべて挨拶を交わす。彼の隣に立つと、自然と手を差し伸べてくれ、私はそれに応えるようにして手をつないだ。 こうして一緒に登校できるのも、今日が最後だ。 そう思うと、胸に鉛が落ちたような感覚がした... -
サプライズ
「玖堂(くどう)って初めてのタイプだったから、ちょっと興味があっただけだよ」 彩(あや)先輩の発言を聞いて、昨日聖(ひじり)がどこかすっきりしたような顔で言っていたのを思い出した。 放課後の東校舎の裏。そこは掃除をしに用務員の人くらい... -
ウタニ ササゲル
文化祭も終わり、紅葉がちらほら見え始めた11月。私はお気に入りとなっている中庭に足を運んだ。休み時間や放課後にここを利用する生徒の数は、先週と比べてぐんと減っていた。すっかり肌寒くなったからなぁ……大きく息を吸った私の胸に冷たい空気が流... -
きっかけの雨
あの人との距離が縮まるきっかけは、いつも雨だった。 初めての会話、初めての一緒の下校、そしてお互い名前で呼び合うようになった時も雨が降っていた。 小雨というよりは強い降り方の雨に、私は昇降口で空を見上げて息を一つ吐いた。まだ降り始めて... -
ささくれ
最初はただの“親友とよく話す女の子”だった。 いつからだろう。君が、胸に引っかかるようになったのは─── ささくれ 「うーん、これどう考えても時間がないなぁ。どうしよう……晟(せい)にお願いしてみようかな?」 玖堂有羽(くどう ゆば)は書類と...