Love Case -アイのいれもの-– category –
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Len*Ren
Sweet Christmas【prologue】
12月25日。今日は前々から皆で約束をしていた日だ。今の仲良しメンバーで盛大なパーティをしようと。今年になってようやくそれが叶うということだ。仲間の晴臣()の叔父が経営している飲食店を貸切にして、皆で準備をし、思い出に残るパーティにするつ... -
Len*Ren
3月14日
三月も半ばとは云え、まだ春には遠い気温が続く。「(昨日は暖かかったんだがな)」伊藤智孝(いとう ともたか)は公園のベンチに座りながら空を見上げる。重く垂れ込めた雲は今にも降りだしそうな雰囲気を醸(かも)し出していた。降らなきゃいいが、と... -
Len*Ren
翔太は見た!!
前から思っていたけど、樫倉(かしくら)先輩はとてもオープンな人だ。いつも僕や玖堂(くどう)先輩をからかっては楽しんだりする意地悪な面もあったり、食堂のおばちゃんや上級生のお姉さん方にも可愛がられるナンパ師でもある。でも……肝心なところは踏... -
Len*Ren
はちみつの時間―甘い言葉を囁かれて―
学校も休みである日曜日、有羽は晟の部屋へと遊びに来ていた。と言っても、お互いにやらなければいけない課題を黙々と進めていたのだが。 自分の分は終わったと背伸びをする有羽は、ノートを見て難しい顔をしている晟に後ろから抱きつき声をかけた。 「晟... -
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2月14日
玖堂有羽(くどう ゆば)は学校の門の壁に寄りかかりながら、自分の吐く白い息が空中に霧散(むさん)していく様子を眺めていた。 「(子供の時は吐く息の大きさを競っていたっけ)」 懐かしくなって実行しようと大きく息を吸い込む。しかし冷気が肺の中... -
Len*Ren
ホットチョコのように。
「はい。どうぞ」 にこりと笑いながら有羽は言った。手にしているカップからは、ゆらゆらとホットチョコレートの湯気がたっている。 晟はお礼を述べてひと口飲む。 ほどよい甘さと、寒空の下にはありがたい温かさに自然と顔がほころんだ。 「どう?」... -
Len*Ren
雨上がり
梅雨とはいえ、これで何日間降っているのだろう。 そんな溜め息が聴こえてきそうな雨の中、野田実春(のだ みはる)は近所の商店街の中を傘を差して歩いていた。 「全く…よく降るよな」 誰ともなく呟いてしまうのは、彼の心も晴れることが無いからだろう... -
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桜切符
夕闇に彩られた公園内の広場では、あちらこちらで宴会が始まっていた。それを避けるようにして、ドーム状に広がる桜並木の道を海白彩(うみしら あや)と神谷聖(かみや ひじり)の両名が歩いている。彩は雪のように舞い散る花弁を受け止めようと手を差... -
Len*Ren
紆余曲折
いつの頃からだろう。あの人を好きになり始めたのは。有り得ない夢を見ては溜め息を吐(つ)く、そんな行動がいつしか習慣のようになってしまった。彼には付き合っている女性がいる。それが親友ともなれば自分の想いを伝えることが出来ないのは仕方がない... -
Len*Ren
平行線
くらりと身体が揺れた。自らの頭を軽く押さえて神谷聖(かみや ひじり)は机に手を置く。 「大丈夫?聖くん」 優しい女性の声が彼に掛かる。聖は椅子に腰を降ろしながら大丈夫だと答えた。 「ちょっと熱っぽいだけだから」 しばらく休めば治るだろう、そ...